ナラタージュ映画化!島本理生さんの原作あらすじと素敵な文章 ※ネタバレあり


島本理生さんの傑作恋愛小説『ナラタージュ』が、2017年10月7日に映画公開されました!映画化を記念して、原作ナラタージュのあらすじと、島本理生さんの素敵な文章をまとめてみました* 映画と少し違うナラタージュの世界をお楽しみください。

ちなみに"ナラタージュ(narratage)"とは、ナレーション(narration)とモンタージュ(montage)を組み合わせた言葉で、映画などで主人公が回想の形で過去の出来事を物語ることをいいます。

※以下、ネタバレがありますので、内容を知りたくない方はご注意ください

ナラタージュ あらすじ


まだ少し風の冷たい春の夜、工藤泉は婚約者と新居へ向かっていた。その途中、ふと婚約者が泉に訊く。

「君は今でも俺と一緒にいるときに、あの人のことを思い出しているのか」
以前からずっと用意していたのをようやく棚の奥からそっと出してきたような尋ね方だった。(単行本P4)

その言葉に泉は、かつて激しく愛した男性のことを思う。

今でも呼吸するように思い出す。季節が変わるたび、一緒に歩いた風景や空気を、すれ違う男性に似た面影を探している。それは未練とは少し違う、むしろ穏やかに彼を遠ざけているための作業だ。記憶の中に留め、それを過去だと意識することで現実から切り離している。(単行本P4)



大学2年の春、父のドイツ転勤に合わせてひとり暮らしを始めた泉のもとへ、高校時代の演劇部顧問・葉山先生から電話がかかってきた。
演劇部の在校生が少ないので練習へ参加してくれないか、という話だった。

葉山先生の声に、泉は高校時代の記憶が蘇るのを感じる。

初めて葉山先生と会った雨の廊下のこと、映画の話をたくさんしたこと、彼に惹かれていたこと、卒業式の日に一度だけキスをしたこと。

 

演劇部の練習は、泉の同級生の黒川と志緒、黒川の友達の小野君、在校生の柚子ちゃん・伊織君・新堂君、そして葉山先生の8人で始まった。

穏やかに楽しく練習は進んでいくが、ある日急に柚子ちゃんが行方不明になる。心配して探し回る葉山先生をみて、泉は高校時代、一番辛かったときに葉山先生に助けてもらったことを思い出していた。

死んでしまおうと思ったのだ。高校三年のとき、毎日、次の朝を迎えるのがうっとうしくておそろしくて、それだけの理由で夜中に眠れなくなり、(略) ふいに、死んでしまえばいいのだという、ものすごくたしかな意志が湧いてきて、そのときに、まだうっすら霧のかかった町と白っぽい空に溢れてきた黄金色の朝日が途方もなく美しかったのを覚えている。(単行本P187-188)

遠い駅のホームへ飛び込むつもりで家を出た泉は葉山先生と偶然会い、一緒に学校へ行くことになったので、結局何事も起こさず憂鬱な日々をまっとうした。

「工藤は自分自身を適当な人間だと思っているみたいだけど、本当は責任感が強くて完璧主義者だよ。そういう子はかならず最後まで大丈夫なふりをして思い詰めるけど、死んでしまうぐらい嫌なことなんて簡単にほうり出してしまってかまわないんだ。」(単行本P72)

結局、柚子ちゃんは何もなかったかのように帰ってきたが、以前と違う彼女の空気が泉は何となく気にかかる。



ドイツに住む両親のもとへ遊びに行った泉は、久しぶりに家族との時間を過ごす。

しかし日本へ帰ると、葉山先生が体調不良の名目で演劇部の練習を休み、連絡も取れなくなってしまった。心配した泉は2日かけて彼を探し回り、バスターミナルに佇む彼をやっと見付ける。

葉山先生には泉にしか知らない秘密があった。

以前結婚していたことがあり、その妻と、葉山先生の母親との関係はうまくいかなかった。その結果、妻は、母親ごと家を焼こうとした。

その後、妻は実家へ帰り、葉山先生は常に罪悪感に支配されていた。しかし今になって、義父から"君だけを一方的に責めて申し訳なかった"と謝られ、妻のところへ戻りたい気持ちと自分の母親を思う気持ちが混ざり合い、彼をがんじがらめにしていた。

彼を放っておけない泉は一緒に葉山先生の部屋へ帰り、その違和感に気付く。女性の趣味で選んだようなものや、彼の嫌いな映画が置かれている理由を問うと、"本当は別れていないんだ"という答えが返ってきた。やり直すことも別れることもできずにいる、と。

愕然とする泉は、もう彼を追うこと、こんなふうに会うことをやめる決意を告げ、葉山先生から離れる。



4ヶ月続いた演劇部の練習は、夏休み明けの始業式で本番を迎え、解散した。

本番を終えた帰り道、以前にも一度告白された小野君から、このまま一緒に実家へ行かないかと言われ、どこかへ行ってしまいたい気持ちがあった泉はその誘いを受け入れる。小野君の実家で思いがけず楽しい時間を過ごし、泉は彼と付き合うことを決めた。

 

小野君との関係は穏やかに順調に進んだものの、泉の葉山先生への思いを知っている小野君は、嫉妬から度々泉を傷付ける行動をとるようになる。
泉は彼との関係を続けようと努力していたが、ある日、衝撃的な出来事が起こった。

柚子ちゃんが歩道橋から飛び降りたのだ。
演劇部の全員で病院へ駆けつけたものの、声をかけたり励ましたりする以外に、できることは何もなかった。

葉山先生の身震いするほど淋し気な表情をみた泉は、"葉山先生のそばにいたい"と小野君に別れを告げる。葉山先生も、"本当は君にそばにいてほしかった"と泉を受け入れる。

手を握ることしかできないなんて、まるで子供の時に帰ったみたいだと思った。葉山先生は黙ったまま泣いた。互いに手のひらにだけ汗をかくぐらいまで、ただ、ずっと手を握っていた。(単行本P314)

 

その3日後、柚子ちゃんは亡くなった。
柚子ちゃんは性犯罪にあい、深く傷付いていたことが、やっと分かった。死にたくなくて行為を拒めなかったこと、相手を憎めば憎むほど、そんな相手を一瞬でも受け入れてしまった自分をおぞましく思っていたことが、手紙にのこされていた。



妻とやり直すことにした、と葉山先生が言ったのは、柚子ちゃんが亡くなってすぐだった。
高校時代、泉が彼を頼ったことで彼自身も救われていたこと、泉を大事に思うようになり、ようやく妻を大切にできるのではないかと思ったことが告げられる。
泉にとっては皮肉なことだったが、"良かったなぁ"と思う自分が不思議だった。

何かしてあげられることはないかと葉山先生に訊かれ、泉は彼の部屋に泊まりたいという。
最後に、初めて一度だけふたりは抱き合い、本当の別れをした。



その後しばらくは誰のことも愛せなかった泉だったが、社会人になり、ふとしたことから葉山先生とのことを打ち明けた同僚と少しずつ距離が近付き、やがて婚約した。

そんな中、ある食事の席で葉山先生の知り合いの男性と出会う。彼は、泉を以前に見たことがあるような気がしていたと言い、その理由を思い出した。葉山先生は、こっそり泉の写真を持ち歩いていることを彼に打ち明けたらしい。

それを聞いた泉は、途方もない幸福感にも似た熱い衝動に揺さぶられ、人目もはばからず涙を流す。

これからもずっと同じ痛みをくり返し、その苦しさと引き換えに帰ることができるのだろう。あの薄暗かった雨の廊下に。そして私はふたたび彼に出会うのだ。何度でも。(単行本P373)

 

映画版ナラタージュ

引用:映画「ナラタージュ」公式サイト

映画版は、泉役を有村架純さん、葉山先生役を松本潤さんが演じられています。主題歌はRADWIMPSの野田洋次郎さんが楽曲を提供、監督は『世界の中心で愛を叫ぶ』で脚光を浴びた行定勲監督。動員数が90万人を超えるヒット作になりました。
 

 

今回は、島本理生さんの『ナラタージュ』のあらすじ、そして一部の文章を紹介させていただきました。発売当初は私も夢中になって読み、感性豊かなみずみずしい表現に心を洗われ、何度も涙を流しました。発売から12年がたち、映画化されて、より多くの方にこの作品を知ってもらえることがとても嬉しいです。紹介しきれなかったエピソードがたくさんあるので、興味のある方は、ぜひ原作も読んでみてくださいね♪

最後まで読んでくださり、ありがとうございます*


※こちらの記事では、島本理生著/角川書店発行『ナラタージュ』(単行本十版)の文章を一部抜粋させていただきました。

ライタープロフィール

Written by : yukari
飼っている猫と、今まで読んできた小説が宝物です。それと映画、ときどき旅行があれば幸せです。あとはきれいな空と美味しいものとお酒。(欲張り)

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